2014/12/09 9:51

○プルーン

 コーカサスからイランの北部を原産とするバラ科の落葉果樹セイヨウスモモ(Prunus domestica)の乾燥果実をいう。

 スモモにはおもに中国や日本を原産とする日本スモモ(P.salicina)と欧米で栽培されている西洋スモモとがある。西洋スモモは古代からヨーロッパで食用にされ、日本にも明治の初期に渡来したが、風土に適せず栽培は稀である。

 スモモのことを英語でプラム(Plum)というが、プラムの干したものをプルーン(Prune)、さらに乾燥に適したプラムのこともプルーンという。このプルーンは19世紀にアメリカに伝わり、現在ではカリフォルニアで盛んに栽培されている。

 果実は長球形で果皮は黄色~紫紅色、果肉は硬くて黄色~緑色をしている。スモモの酸味はリンゴ酸やクエン酸によるもので、ペクチンを多く含むためジャムやゼリーの原料にもされている。

 プルーンは特に鉄分を多く含み、貧血の改善や疲労回復、食欲増進などの効果が期待できる。また食物繊維も多く、緩下整腸作用もみられる。そのほか糖尿病や肌につやがない人にも適している。

2014/12/04 9:37

○浮萍(ふひょう)

 日本の各地をはじめ世界中の温帯、熱帯に広く分布し、沼や池、水田などの水面に浮かず水草、ウキクサ科のウキクサ(Spirodela polyrrhiza)やコウキクサ(Lemma minor)の全草を用いる。

 成分には酢酸カリウムや塩化カリウム、ヨウ素、臭素などが含まれ、強心作用や解熱作用が知られている。漢方では解表・透疹・利水消腫・止痒の効能がある。

 「発汗は麻黄に勝り、行水は通草より捿い」とさえも言われている。たたし麻黄の性が辛温で風寒表証に用いるのに対し、浮萍の性は辛寒であるため風熱表証に適している。また麻疹や風疹、蕁麻疹などに用いる。

 皮膚の掻痒症には当帰・荊芥などと配合する(浮萍湯)。また浮萍の利尿作用は肺気を通利して水分を膀胱へ送ると説明され、急性腎炎や発熱時の浮腫には蘇葉・桑白皮などと配合する(疏風利水湯)。

2014/11/20 9:43

○仏手柑(ぶっしゅかん)

 インド原産のミカン科の常緑低木ブッシュカン(Citrus medica)の果実を用いる。果実は先が5~10本に指状にわかれ、その特異な形のために仏手柑と呼ばれる。

 ブッシュカンはシトロンの変種とされ、シトロンはマルブッシュカンとも呼ばれている。日本にも江戸時代に中国から沖縄県を経て伝えられ、現在でも和歌山県で観賞用として栽培されている。果汁は少なく、酸味が少ないため食用にはならないが、特有の強い香りがある。

 果実には精油のほかヘスペリジン、リメッチン、ジオスミンなどが含まれ、腸管運動の抑制や鎮痙作用がある。漢方では理気・健胃・止痛・止嘔の効能があり、胃痛、脇腹通、嘔吐、咳嗽などに用いる。芳香性の理気薬であるが、おもに疏肝和胃に用いる。

 消化不良や食欲不振、腹満感などには半夏・木香などと、側腹部張満感、腹痛などには香附子・鬱金などと配合する。

2014/11/19 9:20

○藤瘤(ふじこぶ)

 本州、四国、九州の山地に自生する日本特産のマメ科のつる性落葉低木フジ(Wisteria floribunda)の樹皮にできる瘤を用いる。中国の「藤」はシナフジ(W.sinensis)のことであり、別の植物である。

 日本の民間療法ではフジの老木に生じる瘤を胃癌の治療に用いる。藤瘤からメタノール抽出した成分のイソフラボノイドに発癌抑制作用があるという報告がある。古くから横須賀市の薬局では「船越の胃腸薬」と称して、藤瘤・詞子・薏苡仁からなる煎じ薬を用いていた。

 昭和30年ごろ、千葉大学医学部の外科で手術不能の患者がこの煎じ薬で延命効果があったとして評価され、これを顆粒状にしたものが「WTTC」という商品名で発売された。WTTCという名称は、構成生薬の藤瘤(Wisteria floribunda)・詞子(Terminalia chebula)・菱実(Tranpa japonica)・薏苡仁(Coix lacryma-jobi)の植物学名の頭文字をつないだものである。

 現在、藤瘤はおもに四国の香川・愛媛県などで採取されているが、産出量はあまり多くない。なおフジの樹皮には有毒なウィスタリン、種子にはシチシンなどが含まれている。

2014/11/14 9:52

○附子(ぶし)

 北半球に広く分布するキンポウゲ科の多年草トリカブト属の子根を用いる。トリカブト属は毒草として世界的に知られ、古くから毒殺に用いられたり、アジアではアイヌ民族などで矢毒としても利用されていた。インドや中国では古代より薬用としても応用され、「ビシュ」というインドのトリカブトの呼称が「附子」の語源という説もある。

 トリカブト属は種類が多く、日本だけでもヤマトリカブト(Aconitum japonicum)、カラフトブシ(A.sachalinense)、ホソバトリカブト(A.senanense)など50種余りの種類があるといわれている。国産の野生の株から得られる生薬はおもにヤマトリカブト(オクトリカブト)が用いられている。中国の四川省などで栽培されている品種はカラトリカブト(A.carmichaeli)である。

 トリカブトという名は花の形が雅楽を演奏するときに被る鳥の形をしたかぶりものに似ていることに由来する。薬用として根を用いるが、根には附子・烏頭・天雄などに区別される。一般にトリカブトの根は、茎に続く塊根(母根)があり、その周囲に数個の新しい塊根(子根)が連生している。この根の母根を烏頭、子根を附子、また子根の生えてない細い根を特に天雄という。

 塊根の形が烏の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子、子根がないのは天性の雄ということから天雄という名がある。しかし、現在では日本ではこれらを区別せずに附子といっている。また中国では減毒処理されていないものを烏頭、減毒処理したものを附子と称している。

 附子を薬用にするために古くから減毒する方法が考案されてきた。たとえは生の附子をニガリと食塩との混合液に浸した後に日干しする。これを塩附子という。一方、ニガリ液に数日間浸した後に煮沸などの加熱処理を加えたものを炮附子という。

 日本では塩水に浸した後、石灰をまぶして乾燥させたものを用いているが、これは白河附子として知られている。近年、日本では2気圧の降圧下で120℃の水蒸気による加熱処理を20~30分間行い、さらに品質や力価を一定にするために粉末として加工ブシ末が開発されている。

 トリカブトの成分には毒性の強いアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、低毒性のアチシンなど数多くのアルカロイドが含まれている。アコニチンは加水分解を受けると、ベンゾイルアコニンからアコニンへと変化し、毒性は著しく減じる。薬理的にはアコニチン、メサコニチンなどの鎮痛作用、アコニチン類やヒゲナミンなどの強心作用、アコニチンの血管拡張作用などが知られている。附子の薬理作用として鎮痛作用、抗炎症作用、強心作用、血管拡張作用、新陳代謝促進作用などが報告されている。

 一方、トリカブトの中毒症状として、口舌のしびれ、嘔吐、下痢、流涎がみられ、運動麻痺、知覚麻痺、痙攣、呼吸困難、心伝道障害などが出現視、死に至ることも少なくない。漢方では大熱の性質があり、補陽・温裏・止痛の効能がある。

 一般には陽虚の状態、つまり老化や疾病により全身の機能が衰退し、脈の微弱や身体の冷えが現れたときに用いられる。また、冷えによる痛みや風寒湿による伊丹にも用いられる。たとえば下半身の冷感や倦怠感、下痢、浮腫、腹痛、腰痛、関節痛、リウマチ、ショック状態などに用いる。

 臨床的に附子中毒を予防するために、他の生薬とは別に先に煎じることが必要で、一般に60分くらい煎じる。また溶液の煎じる温度やpHによってもアルカロイドの抽出量に差があるため、附子の使用量が同じでも煎じ方や配合生薬によっても副作用の出ることがある。

 服用に関していえば、消化管内のpHが上がればアルカロイドの吸収が促進される。一般に空腹時より食後のほうが吸収されやすく、また低酸症や潰瘍治療薬を服用している人に副作用が出やすいといわれている。

2014/11/07 10:22

○茯苓(ぶくりょう)

 日本、中国、北米に分布し、アカマツやクロマツなどの根に寄生するサルノコシカケ科のマツホド(Poria cocos)の菌核を用いる。菌核とは菌糸の塊で、不規則な塊状をなし、大小も様々である。中には重さ1kg以上で人の頭ぐらいの大きさのものもある。

 表面は灰褐色であるが、中は白くてチーズ状である。木材腐朽菌の一種で伐採後4~5年経ったマツなどの切り株の根に寄生する。従来、マツホドは枯死したマツの根に寄生すると考えられていたが、生きたマツやその他の植物の根にも寄生し、菌核を作ることが確認されている。

 地下20~30cmのところに隠れているため、かつて日本でも「茯苓突き」といわれる専門家が探す仕事をしていた。茯苓の名は「松の神霊の気が伏してできたもの」という「伏霊」に由来する。マツホドの中にマツの根の通っているものを特に茯神といい、その根を茯神木という。また外皮は茯苓皮、外皮に近い淡紅色の部分を赤茯苓という。茯苓は無味無臭で噛むと歯に粘りつく。

 硬くて、断面が純白できめの細かいものが良品とされ、雲南省に産する天然品が有名である。また 安徽省などではマツの材でマツホドを培養し、土の中に埋めて生産する人工栽培が行われている。かつて日本に流通していた茯苓は、日本産、韓国産、北朝鮮産の野生品であったが、近年、多量に輸入されている中国産茯苓はほとんどか栽培品である。

 茯苓にはトリテルルペノイドのエブリコ酸、パキマ酸、ツムロース酸、多糖体のパキマン、ステロールのエルゴステロールなどが含まれ、水製エキスには利尿、抗潰瘍、血糖降下、血液凝固抑制作用が、パキマンには免疫増強作用などが知られている。

 漢方では利水消腫・健脾・安神の効能があり、水腫や痰飲の治療には必ず用いられる要薬である。とくに脾胃の気虚による湿や痰飲の症状に適している。茯苓は「補にして峻ならず、利にして猛ならず」といわれるように性質は穏やかで、正虚(脾虚)と邪盛(湿盛)の両面から扶正去邪を行うとされている。また心脾を補い、情緒不安定や動悸、不眠などにも用いるが、一般に安神には茯神の方を用いる。

 茯苓皮は補益作用はないが、利水作用に優れ、皮膚の水腫に用いる。赤茯苓には清熱利湿の効能があり、熱淋や血淋といわれる膀胱炎などの排尿以上に用いる。ちなみに茯苓の粉末と米粉を混ぜて作った薄い餅に、胡麻や胡桃、松の実などの餡をはさんだ「茯苓もち(茯苓夾餅)」が北京特産の銘菓として知られている。

2014/11/05 9:37

伏竜肝(ぶくりゅうかん)

 中国華北地方の黄土で作ったカマドを長期間使用した後、カマドの底中央にある焼けた土塊を用いる。焦げて黒くなった部分は除く。日本では素焼きの土器を焼いたものや長年使った七輪を砕いたもので代用している。金匱要略にある黄土湯の黄土は伏竜肝のことであるが、もとの土も黄土の名で小薬に用いることもある。

 成分はおもにケイ酸、酸化アルミニウム、酸化鉄からなり、そのほかに酸化マグネシウム、酸化ナトリウムなどを含む。漢方では止吐・止血の効能があり、王と、妊娠悪阻、腹痛、下痢、吐血、下血、血尿、性器出血などに用いる。

 下血や吐血、不正性器出血などの出血に地黄・阿膠などと配合する(黄土湯)。妊娠悪阻には小半夏湯に茯苓・陳皮と加味する(虎翼飲)。不正性器出血や帯下などに艾葉・赤石脂などと配合する(伏竜肝湯)。

 一般に寒証の出血、嘔吐、下痢に用い、熱証には用いない。また修治法のひとつに伏竜肝の細粉を鍋の中に生姜などの生薬と一緒に炒る土炒法というのがある。

2014/10/30 9:31

○覆盆子(ふくぼんし)

 中国や日本の四国や九州に分布しているバラ科の落葉低木ゴショイチゴ(Rubus chingii)などの未成熟な果実(偽果)を用いる。ゴショイチゴはキイチゴ属のひとつで、一説に果実の形がふせた盆に似ていることから覆盆子という名があるという。日本には江戸末期に中国より渡来し、大分・高知・愛媛・山口県などにみられる。

 成分には有機酸、糖類、ビタミンA様物質などがみられるが、詳細は不明である。漢方では固渋薬のひとつとして肝腎を補益して尿や精液の漏れるのを防ぐ効能がある。インポテンツ、遺精、早漏、夜尿、遺尿などには枸杞子・菟絲子などと配合する(五子衍宗丸)。

2014/10/29 11:43

○茯神(ぶくしん)

 木材腐朽菌の一種。サルノコシカケ家のマツホド(Poria cocos)の菌核、茯苓のうち、とくにマツの根を抱いたものを茯神という。中の松の根は茯神木という。茯神の表面に朱砂の細粉をまぶしたものを朱茯神という。

 茯神には安神・利水の効能があり、茯苓とほぼ同じであるが、古くから安神作用は茯苓よりも優れているといわれている。中国での動物実験でも鎮静作用が報告されている。

 不眠、動悸、眩暈には珍珠母・柏子仁などと配合する(珍珠母丸)。茯神木はマツの腐った根で、外側に少し茯神が残っている。茯神木は平肝・安神の効能があり、健忘や失語症、顔面神経麻痺などに用いる。

2014/10/27 9:34

○福寿草根(ふくじゅそうこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部に分布するキンポウゲ科の多年草フクジュソウ(Adonis amurensis)の根を用いる。フクジュソウは旧暦の元旦ごろに花が開くため、とくに元旦草とか朔日草とも呼ばれ、正月の床飾りに用いられる。花は黄金色で、開花期が長く、春一番に咲く縁起のいい花として喜ばれ、幸福と長寿を組み合わせて福寿草と呼ばれるようになった。

 全草に強心配糖体のシマリンなどが含まれる。シマリンにはジギタリス配糖体と同様の作用があり、ジギタリスの代用に強心・利尿薬として浮腫や心臓病に用いられる。

 ロシアの民間療法でも浮腫や心不全の治療にヨウフクジュソウ(A.vernalis)が用いられていた。しかし、福寿草の毒性は大変強く、中毒症状として悪心・嘔吐がみられ、不整脈、心停止をひきおこして死亡することがある。家庭で民間薬として用いられるは非常に危険である。