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蛞蝓
○蛞蝓(かつゆ)

 軟体動物に属する陸生貝類ナメクジ(蛞蝓)の全体を用いる。ナメクジとはナメクジ科のコウラナメクジ科の総称であり、ナメクジ科は貝殻を持たないが、コウラナメクジ科は背面に薄い皿状の殻片を持っている。中国ではおもにコウラナメクジ(LIMAX)を薬用にする。

 日本全土のほかアジア大陸などに広く分布し、菜園や庭園、石の下や湿ったところに生息し、高温多湿のとき、特に夜間に活動的になる。野菜などの植物の葉や茎、果実などを食べるため被害を与える。体表は粘液で湿っており、這った後には粘液の跡が残る。塩をかけると浸透圧の関係で体が縮むが、死ぬわけではない。

 漢方での性味は鹸・寒で、止咳・解毒・消腫・通経絡の効能があり、喘息、咽頭炎、腫れ物、顔面神経麻痺、痙攣などに用いる。一般に火で炙って乾燥させて粉末にして服用する。日本の民間療法では喘息や咳嗽に生のナメクジをそのまま食べるという方法もある。

滑石
○滑石(かっせき)

 生薬として市場には軟滑石と硬滑石の2種類の滑石がある。軟滑石は天然の含水ケイ酸アルミニウムからなる粘土鉱物、加水ハロサイトのことである。硬滑石は鉱物学上の滑石(タルク Talc)のことで、天然の含水ケイ酸マグネシウムである。

 真正の滑石は軟滑石とされ、正倉院に保管されていた滑石も軟滑石(加水ハロサイト)であることが明らかにされた。現在、中国では主としてタルク(硬滑石)を正条品として用いているが、日本では加水ハロサイトやカオリナイト(白陶土)が用いられている。とくに白くて滑らかで、水で潤すと全体が軟化して崩壊するものを唐滑石と呼んで、上品とする。ちなみに日本薬局方ではタルクを保護薬として収載している。

 漢方では利水・通淋・清熱の効能があり、排尿障害や浮腫、夏期の口渇、下痢、皮膚掻痒などに用いる。とくに膀胱の熱を瀉して排尿を促進するので膀胱炎に適し、また暑熱を解して利湿するので熱射病などによる口渇や煩躁、下痢などにも応用される。さらに外用薬として湿疹や皮膚潰瘍などに用いる。

葛根
○葛根(かっこん)

 日本各地、東アジアに広く分布するマメ科のつる性木本クズ(Pueraria lobata)の根を用いる。クズの花を葛花、クズの根からとれるデンプンを葛粉という。根に多く含まれるデンプンは食用としても葛湯や葛餅、葛切り、葛粉などの原料として用いられている。

 葛粉の作り方はクズの根を洗って外皮を除き、つぶして水に浸して粥状にし、滓を布でこして得られた租デンプンを水槽に入れて沈殿させ、上澄み液を捨てる。このような精製の行程を繰り返し、最後に残った白色の沈殿物を乾燥させて固めたものが葛粉である。日本では奈良県の吉野葛、福岡県の秋月葛が有名である。ただし市販されている葛粉のほとんどは小麦やサツマイモなどのデンプンである。

 根にはデンプンのほかにダイジン、ダイゼイン、プエラリンなどのイソフラボン誘導体が含まれ、解熱、鎮痙、降圧、消化管運動亢進作用などが知られている。漢方では解肌・透疹・潤筋・止渇・止瀉の効能があり、頭痛や肩こりなどの感冒症状、麻疹、筋肉の緊張、口渇、下痢などに用いる。そのほか中国では高血圧の随伴症状や狭心症、片頭痛、突発性難聴などにも応用されている。民間でも葛デンプンに砂糖を加えて溶かしたものを葛湯と呼んで風邪の初期や腹痛に用いている。

藿香
○藿香(かっこう)

 フィリピン原産とされ、熱帯の地方、中国の広東・雲南省などで栽培されているシソ科の多年草パチョリ(パチュリー:Pogostemon cablin)の全草を用いる。また日本各地、東アジアに分布しているシソ科の多年草カワミドリ(Agastache rugosa)の全草も用いられる。現在、わが国で流通している藿香の基原はほとんどがパチョリであり、広藿香ともいう。広藿香の名は広東省の海南島てせ栽培化されたことに由来する。これに対し、カワミドリは土藿香とか川藿香(四川省産)などと呼ばれている。

 パチョリの精油成分はおもにパチョリアルコールで、オイゲノール、ケイヒアルデヒドなどが含まれる。この水蒸気蒸留したパチョリ油は香水の調合に用いられる。一方、カワミドリの主成分はメチルチャビコールである。カワミドリには抗真菌、抗スペロヘータ作用などが知られている。インドではパチョリを衣服の香料や浴湯料に用いるほか、薬用としては鎮痛・解熱薬、あるいは喘息や消化器疾患の治療に用いてきた。

 漢方では解暑・健胃・止瀉の効能があり、夏季の感冒、頭痛、嘔吐、下痢などに用いる。芳香性の強い健胃整腸薬で、とくに夏の胃腸障害や暑気あたりなどの常用薬として知られている。

葛花
○葛花(かっか)

 マメ科のつる性木本クズ(Pueraria lobata)の花を乾燥したものを用いる。クズの根は葛根である。クズは日当たりのよい土手や山野に生え、夏から初秋のころに香りのある紫紅色の花を咲かせる。秋の七草のひとつであり、茶花としても喜ばれる。

 葛の蔓の繊維は葛布と呼ばれる織物としてふすま紙や着物などに利用されていたが、今でも掛川市などで民芸品として生産されている。またクズの葉は家畜の飼料としても利用されている。19世紀に緑化を目的として日本からアメリカにクズ(Kudzu)が移植されたが、繁殖力が旺盛なため今日では侵略的外来種として指定されている。

 葛花は花が全開する前に採り乾燥される。葛花は昔から二日酔いの妙薬といわれ、煎じたり、粉末にして服用する。葛花と小豆の花を粉末にして服用すれば酒に酔わないともいわれる。

 漢方でも酒毒を解き、胃腸をスッキリさせる目的で、二日酔いの頭痛や悪心に陳皮・縮砂などと配合する(葛花解醒湯)。最近の研究でもクズの花や根には肝のSODやカタラーゼの活性を上昇させ二日酔いを予防する効果や、アルコール摂取量を抑制する効果が報告されている。

カスカラサグラダ
○カスカラサグラダ

 北アメリカ西部、ワシントン州やカリフォルニア州を原産とするクロウメモドキ科の落葉低木カスカラサグラダ(Thamnus purshiana)の樹皮を用いる。現在では北アメリカ各地で栽培もされている。アメリカに移住したスペイン系メキシコ人修道士がこの木を「聖なる木(カスカラ・サグラダ)」と呼んだのが名前の由来である。

 樹皮にはアントロン類のカスカロシドA~D、バルバロイン、クリサロイン、アントラキノン類のエモジンなどが含まれ、瀉下作用が認められる。新鮮な樹皮にはアントラノールが含まれ、飲むと嘔吐などの副作用がある。このアントラノールは次第に酸化されてアントラキノンに変化するため、薬材としては半年から1年以上乾燥し貯蔵したものを用いる。

 19世紀後半からアメリカやヨーロッパで瀉下薬として広く用いられるようになった。現在、日本でも便秘薬として市販されている家庭薬にしばしば配合されている。

花蕊石
○花蕊石(かずいせき)

 変成岩類の岩石、比較的普通に見られる大理石の一種である蛇灰岩の塊を用いる。おもに方解石の顆粒からなり、蛇紋岩を含むものである。不規則な灰白色の塊状で、淡黄あるいは緑黄色の暈が交互にある。

 成分はカルシウムとマグネシウムの炭酸塩のほか、鉄塩やアルミニウム塩なども含む。一般に焼いた後に水飛し、細かく砕いて用いる。漢方では止血・活血の効能があり、肺結核の喀血や内出血、外傷による出血などに用いる。肺結核による喀血や不正子宮出血に単独で服用する(花蕊石散)。また乳香・没薬・蘇木などと細末にして内出血の部位に塗布すると虚瘀止痛の効果がある。

花椒
花椒

 中国の各地に自生し、栽培されているミカン科の落葉低木カホクザンショウ(Zanthoxylum bungeanum)の果皮を用いる。果実の中の種子は椒目という。日本のサンショウと同属植物であるが、カホクザンショウの果実はサンショウの果実よりも粒が大きくて果皮が赤い。四川省で多く取れるため蜀椒、川椒ともいわれるが、河北省渉県のものが最高品質とされている。

中華料理では花椒塩や醤油と混ぜた花椒油などの調味料としても利用されている。日本にも食品として多く輸入されているが、日本薬局方では医薬品として山椒と規定しており、花椒を除外している。現在中国では蜀椒、泰椒、青椒などを区別せずに基原植物を花椒としている。一説によると神農本草経や金匱要略の蜀椒および川椒カホクザンショウ、泰椒はフユザンショウ、青椒(青花椒)はイヌザンショウと推定されている。

花椒にはリモネン、ゲラニオール、クミンアルコールなど、青花椒にはエストラゴール、ベルカプテンなどが含まれる。薬理的には抗菌・殺虫作用、鎮痛作用などが認められている。漢方では温裏・止痛・駆虫の効能があり、消化不良、胃内停水、腹痛、嘔吐、咳嗽、関節の痛み、下痢、歯痛、回中症、陰部掻痒症などに用いる。とくに花椒は脾胃虚寒、つまり胃腸が冷えて生じる腹痛や下痢の常用薬である。冷えによる下痢には陳皮・厚朴などと配合する。

莪朮
○莪朮(がじゅつ)

 マレーシア、インド、ヒマラヤを原産とするショウガ科のガジュツ(Curcuma zedoaria)の根茎を用いる。中国では広西・四川省を主産地とし、また同属の蓬莪朮、広西莪朮、温郁金などの根茎が用いられる。日本では屋久島種子島、沖縄県などで栽培されている。

 ウコンと同属でよく似ているが、根茎の切断面が淡紫色をしていることから紫ウコンとも呼ばれ、健康食品などにも用いられている。一方、中国ではガジュツの塊茎を欝金(緑糸欝金)あるいは川玉金として扱うこともある。ただし、ガジュツには欝金の主成分とされているクルクミンはほとんど含まれていない。

 主成分にはセスキテルペノイドのクルゼレノン、クルクメノン、クルジオン、ゼデロンのほか、モノテルペノイドのシネオール、ボルネオールからなる精油が含まれ、芳香性の健胃作用、胆汁分泌促進作用、抗菌作用などが知られている。近年、消化性潰瘍の原因とされるピロリ菌に対する抗菌作用も報告されている。

 漢方では活血・利気・消癥・止痛の効能があり、腹部の膨満感や疼痛、腹部腫瘤、消化不良に寄る食積、瘀血による月経閉止、打撲傷などに用いる。消癥とは腫塊状のものを除くことで、莪朮はとくに腹部腫瘤に効果があるといわれている。

 中国では莪朮を子宮癌などの癌治療に応用してその臨床成果を報じている。日本では俗に「弘法の石芋」と呼ばれ、民間の健胃薬としてよく知られ、莪朮を主原料とする胃腸薬もいくつか市販されている(恵命我神散)。莪朮と薬効の似た生薬に三棱があり、両者はしばしば配合されるが、莪朮は破気り作用が強く、三棱は破血の作用が強いとされている。経験的に月経過多や妊婦には用いない。

何首烏
○何首烏(かしゅう)

 中国が原産であるが、江戸時代に日本に帰化して、日本各地に野生化しているタデ科の多年草ツルドクダミ(Poiygonum multiflorum)の塊茎を用いる。ツルドクダミの蔓茎は夜交藤あるいは首烏藤という。

 何首烏は唐時代の中国では不老長寿の薬として有名であった。日本では八大将軍・徳川吉宗が中国から苗を取り寄せて全国に栽培させたのが伝来の経緯といわれるが、いつしか忘れられて雑草と化した。名前の由来は、何首烏というものの祖父が見つけた根を粉にして飲んで親子三代が長生きしたという伝説や、何公という王が服用したところ頭(首)の白髪が烏の羽のように黒くなったという説がある。日本では葉がドクダミに似ているためツルドクダミと呼ばれている。

 根にはアントラキノン類のクリソファノール、エモジン、レシチンなどが含まれ、コレステロール降下作用や降圧作用、抗菌作用、腸蠕動促進作用がある。漢方では補陰・補血・強壮の効能があり、眩暈、足腰の虚弱、筋骨のだるさ、子宮出血、遣精・下痢、痔などに用いる。

 一般に肝腎の精血を補う抗老薬であり、陰虚による皮膚搔痒感や便秘に用いられるほか、黒髪を生じる代表的な生薬として有名である。製剤では何首烏単独の首烏片(首烏延寿片)、薬酒の何首烏酒、養毛剤アポジカ)に配合されている。

 近年、海外において何首烏の製剤を服用して急性肝炎を発症した事例が報告されている。ちなみに白首烏とは、ガガイモ科の植物、大根牛皮消(Cynanchum bungei)の塊茎のことで、何首烏と同様に滋養・強壮作用があり、泰山何首烏とも呼ばれている。

詞子
○詞子(かし)

 インド・ビルマを原産とし、中国では雲南・広西・広東省、チベット自治区などで植栽されているシクンシ科の落葉高木ミロバラン(Terminalia chebula)の果実を用いる。新修本草や金匱要略には訶梨勒とあるが、現在では詞子と呼ばれている。ミロバランの樹高は20~30mにも達するが、果実は3~4cmの卵型をしたもので中に大きな核がある。核を除いたものは詞子肉といわれる。詞子は担任の含有量が多く、インドの代表的な褐色染料であり、また皮なめしなどに用いられてきた。

 タンニンの成分としてケブリン酸など、関連ポリフェノールとしてエラグ酸などが含まれている。ケブリンの平滑筋に対する鎮痙作用のほか、詞子の煎液には強い抗菌作用が知られている。本来はインドの伝承医学アユルヴェーダの主要な薬物であった。

 漢方では止咳・止瀉・利咽の効能があり、咳嗽や下痢、嗄声、脱肛、血便、性器出血、帯下、遣精、頻尿などに用いる。とくに収斂・固渋薬の一つとして慢性の下痢や咳嗽に対して常用され、利咽薬として声が嗄れたときに効果がある。近年、詞子と藤瘤・菱実・薏苡仁とを配合したものに抗癌作用があると報告されたことがある。

夏枯草
○夏枯草(かごそう)

 日本各地を始め、東アジアの寒帯から温帯にかけて広く分布するシソ科の多年草ウツボグサ(Prunella vulgaris)の花穂のみ、あるいは開花期の全草を用いる。花穂が半分くらい枯れたころに採取する。日当たりのよい路傍などに見られ、初夏に咲いた紫色の花が真夏に褐色に変化することから夏枯草といわれ、また花穂の形が靱という矢を入れる道具に似ているためウツボグサと名付けられた。

 全草にはトリテルペノイドのウルソール酸やその配糖体のプルネリン、カリウム塩などが含まれ、弱い降圧作用、利尿促進、抗菌、子宮収縮作用などが知られている。漢方では肝熱を清し、硬結を散じる効能があり、高血圧や結膜炎、羞明、眩暈、瘰癧(頸部リンパ節腫大)、癭瘤(甲状腺腫)、乳腺炎、乳癌、肺結核、帯下などに用いる。特に高血圧や目の炎症など肝熱症状や、瘰癧や癭瘤などの腫瘤の治療薬としてよく知られている。

 日本の民間では利尿薬として膀胱炎(淋疾)や浮腫、腎炎などに用いる。現在では家庭薬の利尿剤には夏枯草がしばしば配合されている。ヨーロッパではセイヨウツボグサ(セルフヒール:Self-heal)の生薬が切り傷の止血薬として、また褐色の花穂が健康茶として利用されてきた。

鶴虱
○鶴虱(かくしつ)

 日本各地、朝鮮半島、中国、台湾などに分布するキク科の越年草ヤブタバコ(Carpesium abrotanoides)の果実を用いる。ヤブタバコの葉や茎は生薬名を天名精という。ヤブタバコはタバコの葉に似ていることからその名がある。果実は細長く、独特の臭気があり、粘着性があり、衣服に付着する。中国の地方ではセリ科のノラニンジン(Daucus carota)の果実やヤブジラミ(Torillis japonica)の果実なども鶴虱として用いている。このためヤブタバコの果実を北鶴虱、ノラニンジンの果実は南鶴虱あるいは鶴虱風、ヤブジラミの果実は華南鶴虱と呼んでいる。

 ヤブタバコの果実にはカルペシアラクトン、セリルアルコールなどが含まれ、回虫や蟯虫などに対する駆虫作用がある。漢方にも駆虫の効能があり、回虫による腹痛や蟯虫症などに呉茱萸・檳椰子などと配合する(鶴虱丸)、なお日本ではヤブジラミの果実を一般に蛇床子と称しているが、中国産の蛇床子(オカゼリの果実)と異なるため和蛇床子とも呼ばれる。

蝸牛
○蝸牛(かぎゅう)

 軟体動物に属する陸生の巻き貝カタツムリの全体を用いる。学術上ではマイマイといい、別名をデンデンムシ、マイマイツブロという。マイマイとは「巻き巻き」、ツムリやツブロとはツブリ(巻き貝)のことである。

 日本には600種類以上のマイマイ類が知られ、殻に黒いすじのあるミスジマイマイ属が一般的である。中国でおもに薬用にされるオナジマイマイ属は日本でも熱帯から渡来し、全国に分布している。フランスでは食用にエスカルゴを養殖している。日本でも戦時中にタンパク源としてアフリカマイマイを移入したが、食用にされずに現在では農作物に大きな被害を与えている。

 薬用には夏に採取して、熱湯で殺した後、天日乾燥し、炒って粉末にする。漢方では清熱解毒・利水消腫の効能があり、小児の熱性痙攣や糖尿病、咽頭炎、耳下腺炎、腫れ物などに用いる。日本の民間療法では腎臓病の特効薬といわれ、焼いて粉末にしたものを服用する。黒焼きの粉末は喘息、扁桃炎などにも用いる。身を焼いて食べると虚弱体質や疳の虫に効果がある。また痔や腫れ物、打ち身、ムカデ刺されなどに外用する方法もある。

 なおアフリカマイマイなどには病原性の寄生虫もいるため、あまり食べないほうが良い。ちなみに福島県の郡山地方では、桑畑に生息する陸生の貝類であるキセルガイの一種(カンニャボ)が古くから肝臓の薬として利用されている。

柿葉
○柿葉

 東アジア温帯に分布するカキノキ科のカキ(Diospyros kaki)の葉を用いる。カキは生薬として色々に利用され、柿のヘタは柿蒂、果実の干したものを柿餅、柿のしぶを柿漆という。

 柿葉にはビタミンCが多く含まれるほか、フラボノイド配糖体のアストラガリン、ミリシトリン、そのほかカロテン、パントテン酸、タンニンなどが含まれる。中国では止咳・止血薬として咳嗽や喀血、消化性潰瘍、血小板減少症などに応用されている。日本の民間療法では血圧降下作用のある健康茶として愛飲されている。

 近年、アストラガリンにヒスタミン分泌抑制作用のあることが認められ、花粉症に対する効果が期待されている。西式健康法では柿茶を常用して微熱や虚弱体質の治療に用いている。柿茶の製法は若い芽を摘み取って葉脈を除き、3分ほど熱湯に通し、小さく刻んで陰干しにし、十分に乾燥する。ただし柿茶を長く服用していると便秘になることがあるので注意を要する。

鵝管石
○鵝管石(がかんせき)

 暖かい浅瀬に生息する腔腸動物のレキサンゴ(Balanophyllia sp.)の石灰質骨格(珊瑚鵝管石)を用いる。しかし地方によって鉱物である鍾乳石の先端部分や管状の滴乳石を鵝管石(鍾乳鵝管石)として用いている。珊瑚は直径5mmくらいの円管状で内部は海綿状になっている。

 漢方では止咳・補陽・通乳の効能があり、喘息や咳嗽、インポテンツ、乳汁不足などに鍾乳石と同様に用いる。鍾乳鵝管石は元気を補い、嗄声を治し、去痰し、喘息や咳嗽を改善する。ただし長期間服用すると胃石を形成するといわれている。

海竜
○海竜

 中国の南海の沿岸に生息するヨウジウオ科の魚トゲヨウジ(Syngnathoides biaculeatus)などを用いる。ヨウジウオは日本でも北海道以南に分布し、内湾の海藻の繁茂したところに生息している。ヨウジウオはタツノオトシゴ(海馬)と同じ科に属するが、タツノオトシゴより細長く、直線的な魚である。日本名のヨウジウオとは楊枝魚と書く。ヨウジウオ類には体調が40~50cmくらいもある種類から、20cm以下の種類もある。雄の尾部腹面に育児嚢があり、雌の産み落とした多数の卵を中に入れ、孵化するまで保護している。

 性味や効能はほぼ海馬と同様で、補腎・壮陽の効能がある。強壮薬として慢性病やインポテンツ、分娩促進などに用いる。効力は海馬よりやや劣るとされているが、倍ぐらいはあるという本草書もある。また焼いた海竜は夜尿症に効果がある。

艾葉
艾葉(がいよう)

 日本各地に自生キク科の多年草ヨモギ(Aremisia princeps)またはオオヨモギ(A.montana)の葉を用いる。ただし一般の市場品としては全草も出回っている。ヨモギ属の種類は多く、中国の基原植物にはヨモギと近縁の艾(A.argyi)や野艾(A.vulgaris)が用いられている。沖縄ではフーチバーという名でニシヨモギ(A.indica)が野菜として利用されている。ヨモギはモチグサとも呼ばれ、春先の若芽を草餅や草だんごに用いている。

 ヨモギの葉の裏の繊毛はモグサの原料であり、ヨモギは「よく燃える木」、モグサは「燃える草」という説もある。モグサを日本では熟艾と書くが、中国では艾絨という。ヨモギの乾燥した葉を細かくつき砕いた後、篩にかけて滓を除き、綿のようになって残った柔毛を晒したものがモグサである。日本産のモグサは主としてオオヨモギからとっており、滋賀県伊吹山の名産である。

 葉の成分にはシネオール、αツヨーン、カフェータンニン、ビタミンA・B・C・Dなどが含まれる。漢方では温裏・止血・止痛の効能があり、腹部の冷痛、下痢、鼻血、吐血、下血、性器出血、帯下、胎動不安、腫れ物、疥癬などに用いる。とくに婦人科領域の止血薬や安胎薬としてよく知られている。

 民間では全草を煎じた液を腹痛や貧血、痔の出血に、根を清酒に漬けたヨモギ酒を喘息に、生の葉の汁を切り傷の血止めや湿疹、虫刺されの外用薬に、全草を浴湯料として風呂に入れて冷え性や腰痛、痔の治療薬にとさまざまに用いられている。

 近年、ヨモギで作ったローションに止痒作用があるとして透析患者やアトピー性皮膚炎などに用いられている。ちなみに欧米では近縁種のオウシュウヨモギ(A.vulgaris)がマグワートと呼ばれ、生理不順や分娩促進などに効果のあるハーブとして用いられている。

海浮石
○海浮石(かいふせき)

 海浮石には好物と動物の2種類あり、火山の噴火によってできた軽石(浮石)と腔腸動物であるサンゴの仲間、多孔珊瑚石といわれる脊突苔虫や瘤苔虫の骨格(石花)を用いることがある。中国北部ではおもに珊瑚の石花を用い、日本や中国南部では鉱物の浮石を用いている。

 浮石はガラス質からなり、二酸化ケイ素SiO2を主成分としてアルミニウムやカリウムを含んでいる。石花の主成分は炭酸カルシウムである。漢方ではいずれも性味は寒・鹸で去痰・軟堅・通淋の効能があり、咳嗽や癭瘤(甲状腺腫)、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、泌尿器疾患に用いる。山脇東洋は大黄・赤石脂・硝石などと配合した浮石丸を鼓腸(腹部膨満)の治療に用いた。

海風藤
○海風藤(かいふうとう)

 関東地方以西、琉球諸島、台湾、朝鮮半島に分布するコショウ科の常緑つる性植物フウトウカズラ(Piper kadsura)のつる性の茎を用いる。風藤という中国の生薬名が日本の植物名になっている。よく似たコショウ科の植物にナントウゴショウ(P.wallichii)があり、そのつる性の茎葉の生薬名を石南藤あるいは南藤という。一説にはフウトウカズラは海風藤ではなく石南藤として用いられているともいわれる。

 フウトウカズラの果実はコショウに似ているが、辛味はなく香辛料にはならない。茎や葉にはフトキシド、フトアミドなどが含まれる。近年、中国南部産の海風藤から得られたネオリグナンのカズレノンはきわめて強いPAF物質(血小板活性化因子の拮抗物質)であることが報告されている。

 漢方では去風湿・通経絡・理気の効能があり、リウマチなどによる関節痛に筋肉痛、脳卒中後遺症による麻痺、打撲傷、慢性の咳嗽、喘息などに用いる。沖縄では神経痛、打撲傷ヘビの咬傷、腰痛などに用いている。