2014/08/29 10:17

○白檀(びゃくだん)

 インドネシアやマレー半島を原産とするビャクダン科の常緑小高木ビャクダン(Santalum album)の心材を用いる。中国では一般に白檀香という。ビャクダンは半寄生植物で幼樹は他の植物の根に寄生するが、葉には葉緑素をもち、生長すると10mぐらいの樹木となる。白檀には独特の香りがあり、燃やすとさらに濃厚になる。「栴檀は双葉より香し」の栴檀とは白檀のことである。

 古くから香料としてインドで栽培され、仏教やヒンズー教とともに世界各地に広がり、中国語の栴檀という名はサンスクリット語のチャンダナに由来する。白檀の心材は赤くて芳香があるが、辺材は白色で香りが少ない。このため線香などの香料や薬用には心材を用いる。材は硬く、緻密であるため、小細工物や仏像、美術品、数珠などに利用される。

 心材には精油が2~6%含まれ、、主成分はα・βサンタロールである。漢方では理気・止め痛の効能があり、胸が苦しい、胃が痞える、食欲がない、冷えて胸や原が痛むときに用いる。心材を蒸留して抽出したビャクダン油(サンダルウッド)は、アロマテラピーのエッセンシャルオイルとして、ストレスを緩和させる効果、抗炎症、殺菌・消毒作用、肌を柔らかくする効果などがあり、咽頭の炎症や尿路感染症、ニキビ・吹き出物に効果があるとされている。

 そのほか、石鹸や化粧品の賦香料として利用されている。現在、インドでは白檀は国家管理とされ、インドネシアでは輸出禁止、伐採禁止などの規制が行われている。

2014/08/27 8:55

○白前(びゃくぜん)

 中国南部に分布するガガイモ科の植物、柳葉白前(Cynachum stauntonii)や花葉白前(C.glaucescens)の根と根茎を用いる。古くから同じガガイモ科のふらフナバラソウ(C.atratum)の根と混合されることも多かった。

 成分にサポニンが含まれるといわれるが、詳細は不明である。漢方では降気・止咳・去痰の効能があり、「肺家の要薬」ともいわれる。とくに降気効果に特徴があり、気が下りると痰が消え、咳が止まると説明されている。

 前胡と同様の効能があり、両者を併せて「二前」とも称されるが、前胡は風熱表証の咳嗽に、白前は寒熱に拘らず痰が多く、喘鳴や呼吸困難のみられるときに適している。たとえば気管支炎などの咳嗽には桔梗・紫苑などと配合する(止嗽散)。

2014/08/25 10:32

○白豆蔲(びゃくずく)

 インド南西部を原産とする熱帯地方で栽培されているショウガ科の多年草カルダモン(Amommum cardamomum)の果実を用いる。カルダモンの薬材にはいくつかの種類があり、その基原についてもいくつかの説がある。

 一般に市場で白豆蔲と呼ばれているものは、直径1.5cmくらいの円球形のもので、円形カルダモンとも呼ばれている。そのほかインド東部、東南アジア、中国で栽培されているAmommum類の果実も白豆蔲の名で用いられている。一方、直径0.5~1cm、長さ1~2cmの長卵型をしたカルダモンは小豆蔲とも呼ばれ、ショウガ科のElettaria cardamomumを基原としている。これも市場では白豆蔲として流通している。

 カルダモンは古来インドで薬用とされていたものが、香辛料としてヨーロッパに伝えられ、アラブでは古くから最もポピュラーなスパイスとして知られている。香辛料のカルダモンとしては小豆蔲の方が利用され、カレー粉やウスターソース、肉製品に用いられる。またカルダモンの香りは、コーヒーにもあい、カルダモンコーヒー、デミタスコーヒーなどに利用されている。

 市場では香気を保つために果皮をつけたままで扱われているが、用いるときには果皮を取り去る。また果皮は白豆蔲殻として用いる。種子には樟脳に似た芳香があり、味は辛くややほろ苦い。インドでは食後に口中を爽やかにするために種子を噛むことがある。

 白豆蔲にはボルネオール、カンファー、シネオール、リモネン、小豆蔲にはシネオール、テルピニルアセテート、テルピネオールなどの精油成分が含まれている。これらの精油には芳香性の健胃作用がある。

 漢方では芳香化湿・健胃・理気の効能があり、消化不良や食欲不振、悪心などに用いる。消化不良や腹満感には蒼朮、縮砂、陳皮などと配合する(香砂養胃湯)。インドやサウジアラビアなどでは媚薬としても知られている。

2014/08/19 9:51

○白朮(びゃくじゅつ)

 日本の本州、四国、九州、朝鮮半島、中国の東北部に分布しているキク科の多年草オケラ(Atractylodes japonica)の根茎を用いる。中国ではオオバナオケラ(A.macrocephala)の根茎を白朮として用いている。このため日本産のオケラの根茎を和白朮といい、中国産は唐白朮という。

 中国ではオケラ(A.japonica)は関蒼朮と呼ばれ、蒼朮のひとつとして扱われている。かつて日本では国産で自給できていたが、現在では韓国や朝鮮から和白朮が輸入されている。中国から唐白朮も輸入されてるいるが、日本薬局方の精油含量の規格に適合するものが少ない。

 中国産の白朮の中では浙江省の於潜に産する白朮の品質が最良とされ、とくに於朮と称されている。日本漢方では、白朮と蒼朮をあまり区別せずに用いていたが、現在では日本薬局方ではアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含んでアトラクチロンを余り含まないものを蒼朮として区別している。

 白朮にはアトラクチロン、アトラクチレノリッドⅠ、Ⅱ、Ⅲなどが含まれ、アトラクチロンは嗅覚を刺激して胃液の分泌を促進する。そのほか利尿・血糖降下・抗潰瘍・抗炎症作用などが認められている。漢方では補脾・益気・燥湿・利水の効能があり、胃腸薬や滋養薬の多くに配合されているほか、浮腫や関節痛、下痢などにも用いられる。

2014/08/12 9:41

○白芍(びゃくしゃく)

 中国北部原産のボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根の外皮を除いたものを白芍といい、外皮をつけたままのものを赤芍という。日本漢方では赤芍を用いないため、芍薬といえばこの白芍のことをいう。

 白芍はおもに4年以上栽培したものを用い、洗浄した後にあら皮を削り取り、そのまま乾燥したものを生干芍薬という。そのままではなく沸騰した湯の中で少し煮てから柔らかくした後、日干し乾燥したものを真芍という。一般に日本では生干芍薬が「芍薬」として、中国では真尺が「白芍」として流通している。中国では安徽・四川・浙江省が白芍の品質が最もよいといわれる。シャクヤクは日本でも長野・奈良県、北海道などで栽培されている。

 成分にはモノテルペン配糖体のペオニフロリン、ペオノールなどが含まれ、ペオニフロリンには鎮痛、鎮痙、抗炎症、抗潰瘍、血管拡張、平滑筋弛緩などのさまざまな作用が認められている。漢方では補血・止痛の効能があり、血虚の治療や腹痛、筋肉痛などの治療に用いる。とくにストレス(肝気欝結)のために生じた腹痛に効果があり、これを柔肝止痛、あるいは柔肝緩急という。

 また斂陰作用といって発汗しすぎるのを抑制する作用もある。たとえば桂枝湯では桂枝の発汗作用を抑え、風邪の症状があってもすでに自汗のみられるときに適している。盗汗には牡蠣・五味子などと配合する。

2014/08/11 9:43

○白芷(びゃくし)

 本州の近畿・中国地方、九州、朝鮮半島、中国東北部などに分布するセリ科の多年草ヨロイグサ(Angelica dafurica)などの根を用いる。中国東北部ではこのヨロイグサの根を独活として用いるところもある。

 中国ではヨロイグサとは別に杭白芷(A.formosana)の根もよく用いられ、四川・山東省では川白芷、浙江・江蘇省では杭白芷の名で流通している。かつて日本産を和白芷、中国産を唐白芷として区別していたが、今日、日本での生産はほとんどない。薬用には地上部が黄変して枯れかけたときに根を掘り出すが、ヨロイグサの根には特異な臭いがある。

 根にはフロクマリン誘導体のビャクアンゲリシン、ビャクアンゲリコールなどが含まれる。フロクマリン誘導体はセリ科の類縁植物に多く含まれ、羌活や独活にも含まれている。一般にフロクマリン類は魚毒であるが、高等動物に対しては血管拡張や鎮痙しか認められない。ただし中枢神経を興奮させるアンゲリコトキシンも含まれており、華岡青洲が用いた全身麻酔薬の通仙散にも配合されている。

 漢方では解表・止痛・止帯・排膿などの効能があり、頭痛、歯痛、前額部痛、鼻炎、腹痛、下痢、帯下、湿疹、腫れ物などに用いる。とくに頭痛のときの代表的な生薬で、「太陽には羌活、陽明には白芷、小陽には柴胡、太陰には蒼朮、厥陰には呉茱萸、少陰には細辛」といわれている。また白芷の気は芳香で「丸竅(耳目などの穴)を通じる」といわれている。

2014/08/07 15:15

○百合(びゃくごう)

 日本の各地や朝鮮半島、中国などに分布するユリ科の種々の植物の鱗茎を用いる。日本ではヤマユリ(Lilium auratum)やオニユリ(L.lancifolium)、ササユリ(L.japonicum)の鱗茎、中国では百合(L.brownii)、細葉百合(L.pumilum)、テッポウユリ(L.longiflorum)などの鱗茎が用いられる。苦味の少ないオニユリ、ヤマユリなどの鱗茎は「ゆりね」として食用にもされる。

 鱗茎の成分としてデンプンや脂肪、タンパク質のほか、アルカロイドが少量含まれていることしかわかっていない。漢方では潤肺・止咳・安神の効能があり、乾燥性の咳嗽や熱病後の虚煩に用いる。

 肺結核などで微熱が続き、乾燥性の咳嗽が長引いたり、喀血のみられるときには生地黄・熟地黄・麦門冬などと配合する(百合固金湯)。咳や喘息が続き、咽が乾いて声が出ず、痰に血が混じるときには款冬花と配合する(百花膏)。慢性的な咽頭の炎症で鼻汁や鼻づまりなど、鼻炎症状のみられるときには辛夷・山梔子などと配合する(辛夷清肺湯)。

 熱病が回復した後も微熱が続き、動悸や煩躁感、不眠、多夢、精神不安のみられるときには知母・地黄などと配合する(百合知母湯)。大病後のこのような状態を金匱要略の中では「百合病」と呼んでいる。

 ヨーロッパではユリの根を古くから婦人病に用いており、食べるとお産が軽くなるといわれている。また日本の民間ではユリの花粉をゴマ油で練ったものを切り傷やあかぎれの外用薬にしている。

2014/08/05 9:38

○白芨(びゃくきゅう)

 関東以西の西日本、朝鮮、中国、台湾などに分布するラン科の多年草シラン(Bletilla striata)の球形を用いる。日本には奈良時代に渡来したとされる。

 紫蘭の名のとおり紅紫色の花が咲き、観賞にも栽培されているが、白い花のシロバナシランというのもある。花は蘭茶として飲まれることもある。地下にはカタツムリのような偏圧球形の数個連なっている。この球形を蒸したり、湯通しした後で乾燥する。

 成分には多糖類で粘液質のブレティラグルコマンナンやデンプンが含まれ、止血、抗潰瘍、抗菌作用などが報告されている。この粘液は陶磁器の絵つけや七宝などの工業用の糊としても用いられている。

 白芨は収斂止血の要薬とされ、古くから肺癆などで喀血するときに用いられている。最近の中国では肺結核や硅肺の治癒を促進する補肺作用もあると考えられている。肺結核や気管支拡張症などには白芨を粉末にして単独で用いることが多い。煎じると効力が落ちるという説もある。

 肺結核には枇杷葉・節藕・阿膠などと配合する(白芨枇杷丸)。胃潰瘍の出血には烏賊骨と配合する(烏白散)。また腫れ物や外傷には粉末を単独、あるいは石膏などと併せて外用する。裂肛や皮膚皸裂には粉末を胡麻油などと混ぜて用いる。

2014/08/05 9:35

○白芥子(びゃくがいし)

 中央アジア原産とされ、ヨーロッパや中国で栽培されているアブラナ科の一年草~越年草、シロガラシ(Brassica alba)の種子を用いる。種子の色が淡黄白色のため白芥子というが、単に芥子といえばカラシナ(B.juncea)の種子のことをいう。

 香辛料としてシロガラシの種子は「洋がらし」すなわちマスタード、カラシナの種子は「和がらし」の原料に用いられる。一般に漢方では白芥子を用い、日本の民間療法では芥子が用いられる。

 白芥子の辛味成分はシナルビンであり、芥子の辛味成分はシニグリンである。シナルビンは共存する酵素のミロシンの作用により加水分解され、イソチアン酸パラヒドロオキシルベンジルを生じる。ただし揮発性がないため鼻に対する刺激はない。芥子と同じく皮膚刺激性があり、また抗菌作用もみられる。

 漢方では温裏・理気・去痰・止痛の効能があり、咳嗽、喀痰、嘔吐、腹痛、中風による言語障害や麻痺、脚気、歯痛、腫れ物などに用いる。白芥子は温化寒痰の常用薬で、痰の多いときに適している。

2014/08/04 9:57

白花蛇舌草(びゃくかじゃぜっそう)

 本州から沖縄県、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の一年草フタバムグラ(Oldenlandia diffusa)の全草を用いる。田畑に生える雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名がある。中国の広東省などで研究されている薬草で、マレーシアの民間療法に影響されたものである。

 成分にはヘントリアコンタン、ウルソール酸、オレアノール酸、クマリンなどが含まれ、抗菌・消炎作用がみられる。漢方では清熱解毒・通淋の効能があり、肝炎、扁桃炎、肺炎、虫垂炎、急性腎炎、膀胱炎、毒蛇の咬傷などに用いる。

 民間療法では生で用いることも多い。最近では細胞性免疫を強化し、癌の進展を抑える抗腫瘍作用が注目され、とくに胃癌や大腸癌、肝癌などへの効果が研究されている。一般に半枝蓮と併用されることも多いが、単独の注射液や複合内服液(天心液)も製品化されている。