ホーム蓮の花道雑記
閑話休題
この一ヶ月の間に内藤氏と二度、旅に出た。
旅の事など少し語り論の締めくくりにしようと思う。
一度は七月の下旬の京都花園の法金剛院。二度目は八月のお盆の頃の盛夏の上海であった。

「法金剛院に蓮を撮りに行くんですが、行きませんか」との突然のお誘いに
「行きましょう」と即座に応えた。
法金剛院の蓮の話は氏から何度か聞いていた。ブルーロータスの中でも最も傑作だと思っている一枚も法金剛院で撮ったものだと伺っていた。
勝手にその作品に『観自在』と名ずけていた。

「突然、雨が降ってきたんでお堂の軒下で雨宿りをしてたのね。しばらくして雨が上がって、陽がさしてきたんで蓮池にカメラをかまえたら、これが撮れたの。」

葉脈の透けて見えるグリーンの広大なグラデーションの間にブルーの水面が揺れている。その真ん中に凛とした蓮の蕾が立っている。
尋常な一枚では無い。

「偶然ですか。」
「そう。偶然。」
氏は、『観自在』についてそう断言された。

   愛念愛思胸次を苦む、
   詩文忘却して一字無し。
   唯だ悟道あり道心無し、
   今日猶お愁う生死に沈まんことを。


一休宋純のこの詩はひょっとすると法金剛院の蓮池の傍らで雨宿りをしながら浮かんだものかともおもった。

内藤忠行先生の桜
 「十五、六年前、桜にイカレテ、何んだかんだで、一億円近く桜に入れ込んでさあ、・・・・」

先生が案内してくれたのは天王州アイルの寺田倉庫でした。巨大なエレベーターで五階にあがると、空調完備、警備万全の先生専用の十坪程のスペースがあります。中には数十枚いや百枚の大中小の段ボールケースに入った作品が床と言わず棚と言わず天井まで積み上げられておりました。


 「こっちはゼブラ、あっちはアフリカ、あとは全部さ・く・ら

恐る恐る,縦横2メートル四方はあるさ・く・らを見せてもらいました。

 「これ、桜ですか」
 「そう、さ・く・ら
 「この大きい桜、何枚位あるんですか」
 「そうねえ、40枚くらい」
 「一枚、いくら」
 「うん、○○百万ぐらい」
 「ずうっと、十年もここにあったんですか」
 「そう、ずう~っと・・・・・」

十点程、桜の作品を見せてもらい、その後黄昏時の船着場脇のバーでビールをごちそうになりました。

 「先生、売れるかもわらないし、あの大きい”さ・く・ら”一枚飾っていいですか」

先生はビールを飲み干し、微笑えむと「う~ん、でもやめとこ」

「どうして」
「あれね、湿気に弱いのよ。それに強い光も駄目だし・・・」