ホーム蓮の花道雑記
王成の個展オープニングパーティ(5月某日)

特展酒会の会場、莫干山蓮花画房に着いたのは上海の雑踏に灯がともり始めた頃。
フランス租界のゆきつけのカフェでボルドーを二杯飲んだためかメガネの度数が合ってないせいか知らぬがマロニエの街路樹の夥しい新緑が揺らいで見えた。

会場には既に二三十人の先客がグラスならぬ紙コップにおもいおもいの酒を満たし談笑している。

中国ワインを満たした紙コップを持ち作品を見始めると本日の主役の王氏が挨拶に来られた。
年のころ四十前後のエネルギッシュなのだが眼光に温もりをたたえた画家であった。
「ドイツでの個展は大成功だったそうですね。おめでとうございます。」
「ラオパンも今夜の酒会のためにわざわざ日本からお越しくださりありがとうございます。」
「それでは個展の成功を祈って乾杯」
「カンペイ」
その後あちこちで画廊のオーナー、若い作家、ぶらりと入って来たアメリカ人などと「乾杯」「カンペイ」を繰り返していたときの事である。

忽然と、颯爽とひとりの先生がギャラリーに入ってこられた。
浅黒い精悍な顔に黒々とした口ひげをたくわえ、黒マントはおっておられる。「ん、何者」と思っていると先生は受付台の上の寄せ書き帳になにやら筆を走らせ、紙コップを受け取るとワインをめしあがった。

「李君あの人だれ」
「上海の偉い先生ですね」
「何の先生」
「わからない」
「名前は」
「わからない」
寄せ書き帳のところに李君をそれとなく連れて行った。達筆であった。
「李君、何と読める」
「えーっと、男は清也。女は濁也。たしか、老子ですね。」
「どういった、意味」
「そっちのことはラオパンの方が詳しいと思います。」